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アダージョ・カンタービレ

第1章 自己紹介

さて、みなさま、こんにちは。

突然ですが、俺は動けません。
原因不明の難病を患って、そろそろ10年。

手足のふるえから始まって、歩けなくなり、食べられなくなり、今では人工呼吸器がないと生きられない体。

首には気管カニューレ(呼吸器)、胸にはcvポート(点滴)、あそこには尿道カテーテル

エアクッションが効いた自宅ベッドの上で、時間をもてあましながら、日がな1日過ごしてる。

目に映るのは、見飽きた室内。
気分転換のためとして、日中テレビはつけられているけれど、俗世間への興味なんてとうにない。

だって、今日の天気、世間をさわがす出来事、話題の店……
そんなの知って、なんになる?

なにもできない悔しさにうちひしがれて、己の無力感が増すだけだ。

俺はずっとベッドの上、ここから降りるときは、この生命の尽きるとき。

その瞬間をずっとずっと、待ち望んでる。
回復の見込みのない悪化一途からの、永遠の解放を願ってる。

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