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キセキ

第4章 Vol.4〜僕を想う人

それでも、
 顔では笑っていたし、
 誰にも、何も言わなかった。

ただ、たまに、無性に泣きたくなった。
 涙の出ない号泣
 涙が出ない代わりに、
内臓を全て吐き出すような、
嗚咽にも似た吐き気を感じた。

それでも、
 ボクは、独りで立っていた。

その日、放課後一人で教室に残っていた。
 帰りの準備に手間取ったのか、
 何か用事があったのか。
 とにかく、最後の一人になってしまった。

 そこに、何故か先生が来た。
 担任の先生。

「元気か?」

先生は、ボクに言った。
「フツウ」
ボクは応えた。

「そうか・・・。なんかな、ずっと、気になっていてな。
 お前、元気ないなって。」

ボクの瞳孔はきっと1mmくらい大きくなっただろう。
「何かあったら、話してくれよ。何かできるかもしれない。」

ひとりになるな

と。

その言葉にどう応えたか覚えていない。

でも、ボクは思った。
『ああ、キセキだ・・・』と。

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