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キセキ

第17章 Vol.17〜似た者同士

☆☆☆
「・・・うさん!お父さん!!」

声がした。
誰だ?看護師なら『関島さん』と呼ぶはずだ・・・

お父さん・・・?

「お父さん!」
ぎゅっと手を握る温かな感触。
しっとりとした柔らかい手のひらが、俺の右手を包みこんでいた。

なんだよ・・・

薄っすらと目を開けると、そこには、絵梨花がいた。

目に涙をいっぱい浮かべて、唇を噛んでいた。

ガバリと起き上がり、その拍子に胸にズキンと痛みが走る。
いっつ・・・
胸を押さえてうずくまった俺の背中を絵梨花が優しく撫でた。

「ば、馬鹿野郎・・・おめえ・・・な、なんでここにいるんだ!」
わかるわけがない。なのに、なんで?
そう思った時、俺の脳裏にひらめいたのは妹の顔だった。
「そ・・・うか・・・静江のやつ」

違うよ!

絵梨花が鋭く言った。
顔を上げると、目に溜まった涙がぼろりと流れているところだった。

「違うよ!静江おばさんには日本に私が来てから、お父さんの居場所を聞いただけ!」
「じゃあ・・・なんで?」

どうしてだ?完全に隠し通したはずだったのに・・・っ!

「何年、何年お父さんの娘やってると思ってるの!?
 お父さん・・・嘘つくとまばたき増えるんだよ!」

馬鹿!
バカバカバカ!!

そう言いながら、俺の胸に顔を埋めて、絵梨花は泣きじゃくった。
その肩を、俺は、恐る恐る、そっと包み込むように抱く。

「大きく・・・なったな・・・」

嘘をついても、何をしても伝わってしまうのか・・・

自分より、相手のことを考えてしまう
考えれば、似た者同士じゃねえかよ・・・
それに、セリフまで、一緒ときてる

そんな、笑えて、泣ける茶番劇

これは、そうか、
神様が俺にくれた、
最後のキセキなんだろうな

俺の目からも、また、涙が落ちていった
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