テキストサイズ

見おサメ【3ページ短編】

第1章 宇宙ステーション


惑星サルビアBe-1の探査が完了した

探査チームは撤収となる

個人的な荷物と膨大なサンプルを持ってこの長期間住み慣れた宇宙ステーションを離れるのだ

ビルの解体工事のように解体業者が後からやって来るわけではない
施設はこのまま放棄される

明日からはそれぞれ部屋にこもり、荷物の整理とサンプルをシャトルに移動させる

今夜はさよならパーティー
ブン太は酔っ払いながらもチラリと展望ルームにたたずむケイラを見つめていた

このミッションの数年間、彼はいつの間にかケイランのことが気になっていた

だが、チームは家族のようでありその調和を崩すような勇気は無かった

そうこうしているうちに科学主任のピーターがケイラに近づき、ふたりは長い間談笑していた

学生時代からこうだった

ブン太には先に進む勇気がない

落ち込んでいるブン太をよそにテーブルでは恒例の言葉遊びのゲームが始まり一段と騒がしくなる

ひとりでチェアに座っていたブン太に“仲間に入れよ”と声がかかった

だがブン太は気が乗らず誘いを断り、少し酔いを覚ましてくると言い、部屋を出た

ステーション本体と実験ユニットを繋げている透明チューブの中を、ふわっと身体を浮かせながら移動していく

透明チューブから見下ろす惑星サルビアBe-1はとても壮大な光景だ

青い大気の層と赤いメタンの層の雲が渦を巻いている
青い雲と赤い雲は相反して、決して交わらない

その幻想的な光景を眺めながら
「ひとと交われないのは、まるでボクのようだ」とぽそりとつぶやいた

「……なにが“ボク”なの?」
と唐突に声を掛けられた


あたりに誰も居ないと思っていたブン太はかなり驚いた
「ごめんごめん、脅かすつもりはなかったんだよ」
笑っているのは先程まで展望ルームでピーターと談笑していた筈のケイラだった…


「け、ケイラッッッ!?どうしてここに??」


「私のほうを見ていたから何か話したいことがあるのかなと思って…、

 ここの接続チューブってこんなにパノラマビューで見れるんだね、わたしは実験ユニットにはほとんど行かないから今までこんな絶景ポイントがあるのを知らなかったよ」

ケイラは小さな女の子のように足下に広がる惑星サルビアBe-1の光景に圧倒されていた


ストーリーメニュー

TOPTOPへ