
見おサメ【3ページ短編】
第1章 宇宙ステーション
「実験ユニットはステーションの真下にあるからね、展望ルームもよく見えるけど、ここの迫力もなかなか見応えがあるだろう?
なんせ足下全体にサルビアBe-1が広がっているからね」
「ええ、すごいわ!展望ルームからの景色も悪くは無かったけど、ここは床すべてが透明なのね!」
「ピーターはどうしたの?」
「巻いてきちゃったわ、あの人しつこいんだもの」
ケイラはいたずらっ子のように舌を出した
「ブン太の実験室を案内してよ?
もう見納めでしょ?」
「別にいいけど……、ほぼ処分しちゃったから特に何も残ってないよ?」
ふたりは透明チューブを通り抜けて巨大な実験ユニットまでやって来た
大きな水溶液カプセルがいくつも立ち並んでいる
本来はそれぞれに様々な生物が閉じ込められて、研究されているはずであった
「この中に居た生物たちは廃棄されたの?
仕方ないとは言え、可哀想ね」
カプセル内は惑星サルビアBe-1の海に似せた水溶液で満たされ、数年間に及ぶ生物の変化を数値化させてきた
結果、この惑星は開発に適していないということが結論づけられ、計画は終了
貴重なサンプルを提供してくれた彼らに敬意を評して睡眠薬を投与してからステーション内の原子炉にて焼却処分された
「可哀想かもしれないけど、餓死させるわけにはいかないからね」
「あら、まだ奥の方に稼働中のカプセルがあるわね?」
ケイラの視線の先にはひときわ大きなカプセルがあった
中に何かが漂っているようだが、ここからではよくわからない
ふたりが近づく
「えッ!?ヤダ!!サメじゃない!?」
広めのカプセルにはサメが一匹入っているのだ
「コイツだけ睡眠薬がなかなか効かなくてね、
今朝から量を増やしていってるんだ
眠ってくれたらようやくここを閉鎖出来るんだけど」
ケイラが近づくと動きはしないものの目がギョロリと反応する
「……まだ眠りは浅そうね」
「コイツは薬がゆっくりしか効かないんだ」
「惑星の海洋成分が適さないのは少量のアルコール成分が含有しているんだったわよね?
この子は酔っ払っているの?」
「そう、感覚が麻痺して酒に酔ったような状態なんだよ、だから余計に薬が効かないんだよね」
「じゃあこのカプセルに入ると酔っ払っちゃうわけ???」
ケイラはブン太に怪しげな笑みを浮かべた
