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仕事おサメ【2ページ短編】

第1章 スナイパー


アビーはコロニーの外で待機していた

展開している太陽光反射ミラー“ガラス張りの川”から内部を見つめている

同僚のフランクも姿は見えないがコロニーの対角線上にてこちらの死角となる位置で監視している

「フランク、遅くない?ラザール議員の車が現れないわよ!?」

「アビー、焦るなよ?予定変更の連絡は無い
 それより、今回のターゲットを済ませたら引退するって本当かい?まだまだ腕は鈍っちゃいないだろう?何故だ??」

「息子が物心つく前に狙撃手の仕事を辞めたいだけよ!こんな裏社会な仕事に未練は無いわ」

「じゃあ今回でペアは解消か、残念だな
 アンタとは安心して任務をこなせてきたから
 しかしアンタがレジ打ちの仕事をするようには思えんがな」

「シィッ!あの黒いシャトルはなに?」

「俺からは見えないが」

スナイパー家業の最後の仕事で標的間違いは避けたかった

標的のラザール議員は海洋プラントの推進派だ
水産プラントはおもに淡水加工物に限定されてきた
それは海水では設備の劣化が早すぎるためコストが合わなかったからだ

地球からの水産加工物はとても貴重でスペースノイドの庶民の口にツナですらほとんど手に入らなかった

そんな中ラザール議員は試験的な海水プラントの生産と設備を非合法に行っており、政敵も多かった

「アビー、今連絡が入った!議員はすでに海洋プラントに入管している、あのシャトルはダミーだ!上を見ろ!あの海洋プラントまで飛べるか?」

シリンダー型スペースコロニーは20から50基程度の丸いユニットを伴って回転している
それは農業プラントや水産プラントなどの生産地、貯蔵地として運用されていた

「40秒ほど待って!監視カメラがもうすぐ向こうへ向くから」

コロニーの外壁周辺をモニターしている自立型監視カメラは定点観測しながら一定間隔で向きを変える

数秒後、カメラが自動的に向きを変えた
「今よ!フランクも飛んで!」

2機のスナイパーカスタムは少しだけバーニアを吹かせふわりとコロニーの外壁から浮き上がる

今までコロニーの反対側に居て目視できなかったフランクの機体が一緒に上昇している

2機はゆっくり上がっていく

コロニーの外周部に備え付けられた巨大なサークルにたくさんのプラントが固定されている

「どれッ!?」

「12番だ!急げ!」

小刻みな姿勢制御をした

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