
コーヒーブレイク
第5章 からたちの花が咲いたよ
「からたちのそばでないたよ
みんなみんなやさしかったよ」
昔から不思議だった。
どうして、優しくされて、喜ぶのではなく、泣くのか。
いま、少し、わかった。
父親は、たくさんの通夜振舞い(会葬者に提供する夜食。寿司などのオードブル)を分けてくれた。
「泣くなとは言わないよ。ただし、泣くのなら、これを全部食べたあとにしなさい」
◆
思いがけないおみやげと香典返しを持って家に帰ると、意外な人が待っていた。
母だ。
父の事件は全国ニュースになっていた。
こちらの住所は変わっていないのだから、帰ってきたことに不思議はなかったが──
なんて言えばいい?
この、責任を放棄した女に。
この、もう一人の加害者に。
何も言えなかった。
…この人に罪はありますか…
父親の声が聞こえたような気がしたからかもしれない。
ただ、「おかえり、お母さん」とだけ。
母は泣き崩れた。
謝りながら、泣いた。
私は、約束があるから、泣かなかったけど。
もちろん、泣きたかった。
「からたちのそばでないたよ
みんなみんなやさしかったよ」
みんなみんなやさしかったよ」
昔から不思議だった。
どうして、優しくされて、喜ぶのではなく、泣くのか。
いま、少し、わかった。
父親は、たくさんの通夜振舞い(会葬者に提供する夜食。寿司などのオードブル)を分けてくれた。
「泣くなとは言わないよ。ただし、泣くのなら、これを全部食べたあとにしなさい」
◆
思いがけないおみやげと香典返しを持って家に帰ると、意外な人が待っていた。
母だ。
父の事件は全国ニュースになっていた。
こちらの住所は変わっていないのだから、帰ってきたことに不思議はなかったが──
なんて言えばいい?
この、責任を放棄した女に。
この、もう一人の加害者に。
何も言えなかった。
…この人に罪はありますか…
父親の声が聞こえたような気がしたからかもしれない。
ただ、「おかえり、お母さん」とだけ。
母は泣き崩れた。
謝りながら、泣いた。
私は、約束があるから、泣かなかったけど。
もちろん、泣きたかった。
「からたちのそばでないたよ
みんなみんなやさしかったよ」
