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14時半、全員がホールに集まった。窓から差し込む午後の光が、少し眠気を誘うようにやわらかく広がっている。椅子に座ってざわめきを交わす中、前に立ったのはいつものおじいちゃん講師だった👴🏻

「みなさん、今回は“がん”について学んでいただきます」
その一言に、場がすっと静まる。

「今の時代、がんになる確率は二分の一と言われています。つまり、誰にでも起こりうる病気なのです。だからこそ、こうして学ぶ機会を設けるべきだと考えました」

穏やかでありながら、重みのある声がホールに響いた。私も自然と背筋を伸ばしてしまう。

講師はにこりと笑みを浮かべ、横に立つ男性へ視線を向けた。
「普段は消化器外科医をされています。……亀井先生です。先生、本日はよろしくお願い致します」

「よろしくお願いします」そう言って軽く頭を下げた亀井先生は、五十代くらいだろうか。眼鏡の奥の瞳は落ち着いていて、白衣ではなくシンプルなスーツ姿が逆に新鮮だった👨🏻‍⚕️

先生は一呼吸おいて、語り出す。
「改めまして、亀井と申します。私は都内の大学病院で、消化器外科を中心に診療をしています。胃や大腸、肝臓、膵臓といった臓器を扱うので、がんと向き合う機会が非常に多いです」

その声は低く、穏やかで、まっすぐだった。
「外科医として二十年以上、がんの手術に携わってきました。これまで数えきれないほど多くの患者さんと関わり、命の重さや限りある時間の尊さを日々感じています。もちろん手術で治せるケースもありますが、現実には限界もあります。だからこそ、医師として“治す”ことだけでなく、“どう生きるか”を共に考えることが大事だと学びました」

先生の目が、静かに私たちひとりひとりを見渡す。
「今日は難しい医学的な話ではなく、みなさんにも分かりやすい形で、“がんという病気とどう向き合うか”を一緒に考えていきたいと思っています🤝🏻」

その言葉に、ホールの空気が少し和らいだ。緊張と同時に、「ちゃんと聞きたい👂🏻」という気持ちが胸に灯る。
横を見ると、まつりが真剣にメモを取り始めていた✍🏻
あいかは眉をきゅっと寄せ、先生の言葉を噛みしめるように聞いている。
私もペンを握る手に自然と力が入り、これからの話を絶対に聞き逃したくないと感じた。