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My Godness~俺の女神~

第1章 Prologue~序章~

Prologue~序章~

―心が、壊れてゆく。
 俺の中で、何か大切なものが音を立てて壊れてゆく。―

「この口紅、少し派手すぎない?」
「いや、そんなことは全然ないッスよ。とてもよくお似合いです」
 俺は、もうこれかれこの鬱陶しい女に二時間余りもとっ捕まったままだ。俺が営業用のスマイルを顔に貼り付けたままでいるのを良いことに、女は次第にエスカレートして馴れ馴れしくなってゆく。
 まあ、それも当たり前といえば当たり前だ。彼女―いや、この店を訪れる女性客たちは皆、法外な金を払って、俺たちホストとのひと刹那の偽りの恋を、幻の夢を見にきているのだから。
 つい先刻から、女はついに俺の肩に両腕を回し、抱きついてきた。体勢から見れば、女は俺にしなだれかかっている―というよりは、完全に俺の膝に乗っている。他の店は知らないが、俺の勤める店はすべて完全個室制になっている。
 まず店を訪れた女性客は店頭のパネルを見て、今日の指名を決める。パネルにはむろん、うちの店にいるホスト全員の顔写真と名前がズラリと並んでいる。指名を受けたヤツが空いていれば相手をするし、生憎と接客中だったら、代わりのホストが入る。
 その写真は当然ながら、客に指名して貰うためには大切な手がかりになる。だから、仲間の中にはわざわざ高い撮影料を支払って有名な写真館で写真を撮って貰うヤツもいる。もちろん、町のいかにもといった古めかしい写真館ではなくて、そういう風俗営業のキャバ嬢とかホステス、ホストといった連中の宣伝広告用の顔写真を撮り慣れている専門のところだ。
 俺はそういうのは好きじゃないし、そこまでする気も全然ない。だから、そのまま適当に撮ったケータイ写真を使っている。しかし、不思議なものだ。何万と使って撮った写真を載せているヤツよりも、ただの素人写真を使う俺の方が断然、指名が多い。
 別に自分が店のナンバーワンだからって、それがどうしたのか? と言いたいけれど、他のヤツらにとっては重大問題らしいのだ。

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