テキストサイズ

淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第9章 哀しい誤解

 身体を重ねることと、仲好くするのはまた別次元の話であり、心が近づくのには何の問題もないわけだし、心がまず通じ合えば、自然と情も湧いてくるものだ。そうすれば、もしかしたら、春泉も秀龍に素直に身を任せても良いと思えるようになるかもしれないのに。
 オクタンは春泉に特に男女間のことは教えていない。先日のようなことがあるのだとすれば、そろそろ教えた方が良いのかもしれないとは考えている。あの夜、秀龍が春泉を組み敷いているのを見たときは、流石に愕いた。
 何とも酷い光景だったと、あのときの春泉の受けた仕打ちを思う度に、春泉が憐れに思えた。秀龍は、まだ何も知らない春泉の無垢な身体をを情け容赦なく開こうとしていた。
 あの後、春泉はオクタンの部屋に連れ帰っても、なかなか泣き止まず、震えも止まらなかったのだ。秀龍に指を挿入され、捏ね回された内奥が痛いと、泣いていた。
 オクタンから見れば、似合いの二人ではあるが、いかにせん、秀龍は聡明な割にこういった恋愛とか男女関係には疎いようだし、春泉は人妻になったとはいえ、まだまだ子どもだ。不器用な二人がぶつかり合い、そのことで互いが余計に傷ついている。
 春泉が実年齢よりも幼いのは、オクタンの育て方にも問題があったのだろう。それが悪いとは思わないけれど、春泉もそろそろ大人の世界に脚を踏み入れても良い頃合いではないだろうか。
「若奥さま。仔猫が生まれるのは、まだもう少し先ですから、それまでにおいおい考えましょう」
 オクタンがわざと明るい声音で言うと、春泉がホッとしたように頷いた。春泉は春泉なりに、この場の気まずい雰囲気を気にして、変えたがっていたらしい。
 そのときだった。
 両開きの扉の外で、コホンと大きな咳払いが聞こえた。

 どこかわざとらしい咳払いの後、殆ど間を置かず、秀龍が部屋に入ってきた。
「お帰りなさいませ」
 春泉とオクタンはすがさず立ち上がり、頭を垂れる。
「それでは、私はこれで失礼致します」
 若夫婦の邪魔をしてはと、オクタンは気を利かせたらしい。早々に退室しようとするのに、春泉は心細げな視線を向けた。
「オクタン―」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ