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「なるほどねえ、確かに俺は下衆だよ。殺し屋なんて最底辺の職業やってる下衆だ。それは間違いない」


　大して気に障った様子もなく飄々と笑みを浮かべた文芽は「で？」とわずかに首をかしげた。


「さっきさあ、一瞬キレたのはなんで？」


　その問いにキレた原因を思い出したのか、千尋は奥歯を噛みしめ、ぴくりとこめかみに青筋を浮かばせる。

　そうして歯と歯の隙間から絞り出すような声で言った。


「大してあいつのことを知らねえやつが、知った風に好きだの何だの言ってんじゃねえ――っつおうとしたんだよ、ニヤケ面」

「へえ、そうだったんだ」


　特に興味もなさげに頷いた文芽は、不意に手にしていた学生鞄を千尋へと放り投げた。