【可愛い】の魔法
第3章 年齢差・miina
「ここ、いいかな?」
「え?」
「暑くてさ、丁度いい木陰を探してて。」
突然かけられた声に顔を上げると、そこにいたのは私の好きな人だった。
「あっ、ど...どうぞ...」
少しずれて席を譲ると、「ありがとう」と微笑んで校舎裏ベンチに腰掛けた。
突然の展開に、私は挙動不審だったに違いない。
読んでいた本を閉じて、小さくなってしまった私に
「時々ここにいるよね?」
「えっ?あ...どうして...」
「あっ、ストーカーとかじゃないよ!?そこから見えるから。」
彼が指差した場所は来客用駐車場。
あぁ...と納得した表情を見せると、少しホッとした顔になった彼。
今まで遠くから見るしかなかった彼は、近くで見ると思ったより大人で、でもそれより端正な顔立ちに見惚れてしまう。
「いつもね、可愛い子だなーって思ってたんだ。」
「いやっ‼︎そんなこと...ない...です...」
みるみる紅く染まる顔を、両手で覆う。
変な子だって思うよね?
子供っぽいって思うよね?
変な心配をしながらチラッと彼を見ると、優しい顔で私を見てたから、また紅くなる。
それから少し話してから、彼は仕事に行ってしまった。
「またね」って嬉しい言葉をくれて。
それから、本当に彼は講義がある日は校舎裏ベンチに来てくれるようになって、私も校舎裏ベンチで待つようになってた。
憧れと好意の間だった感情は恋になって、人見知りの私は、一大決心をして告白した。
「すき...!...です...」
「え?俺?」
「他に誰がいるんですか!」
恥ずかしさで口調が強くなっちゃった...
「でも......」
あ、でも...が来ちゃった。フラれちゃうのか...
「俺、32だよ?」
「え?そっち?」
これが私たちの始まり。