
2つのグラス
第3章 2つのグラス
翌朝何事もなかったか
のように顔を合わせた。
部長は
「良く寝れたか?」
と尋ね、中川さんは
「部屋に戻ったら
即寝ですよ」
と笑った。
奈央は安心した。
帰りの電車は和やかに
恋愛話をした。
中川さんは昔、浮気を
した経験を暴露し、
こう呟いた。
「ここに赤と青の2つのグラスがあります。
赤のグラスを見ている
ときは、赤に夢中。
青のグラスを見ている
ときは、青に夢中に
なるもんなんですよ。
だからどっちも100%
好きなんです。」
2つのグラス
まさに部長と奈央の話。
奈央は中川さんに
「男の人って最低…」
と避難しながら、
奈央の右手と部長の左手
は握りあっていた。
強く強く握りあいながら。
