
2つのグラス
第4章 赤いグラス
奈央は出張から帰ると
家の電気が付いていた。
「おっお帰りー」
旦那の真司はご飯を
作って待っていた。
「だだいまー」
奈央は何食わぬ顔で
挨拶をかわした。
「どうだった?出張。」
部長の顔がよぎった。
「…楽しかったよ。
でも久々の新幹線は
疲れた。」
落ち着け私…。
平常心…
平常心…
「はい、お土産!」
「おっ分かってるねー
酒のつまみにぴったり」
「飲みすぎないよーに。ねぇ先にお風呂入って
きていい?」
「どーぞごゆっくり」
真司はいつも通り
優しい。
奈央は頭をよぎる
部長の顔を一回
リセットしたかった。
