
たまゆらの棘
第2章 燃ゆる日々
倫は昨日、藤原と別れてから麻布のマンションに行った。藤原と付き合って二年半、倫の誕生日が近づいていた秋も終わる頃だった。藤原の最後の言葉…愛してるよりも、倫にたいしての、紫の薔薇が、倫の胸に苦しく、切なく響いた。誰よりも、自分を解っていてくれていた藤原…
倫は許せなかった。自分が藤原を愛していると知ったと同時に失恋したのだ。藤原の最後の言葉がこだました。…目の前の倫だけを愛していると…でもノラ猫の倫の心にそれは届かなかった。信じられなかったのだ。
倫は一人、ひっそりと眠る時、時々、幼いころ、一人で眠っていた事を思い出した。(藤原…)倫は藤原の肌が恋しくて泣いた。そしてこれからの行く末を考えた。藤原を忘れられる事がしたい。藤原を忘れられる場所に行きたい、と思った。海外…倫はひらめいた。俺は悪魔。またしても倫の中に宿った人格。そして以前から行ってみたいと思っていたイギリスに重点を置いたのだ。(俺は…チーコ。何処へいくのか自分自身わからない)倫は自分の事を堕天使だと言った藤原を思い出した。(駄目だ。ここにいると藤原から逃げられない…)倫は荷造りをはじめた。倫の心は決まっていた。藤原に買って貰った服はどれも思い出深く、それも倫を切なくさせたが、倫は容赦なくそれらをバックに詰め込んだ。そして鍵をテーブルの上に置き、昨日は夜にマンションを抜けてきたのだった。その晩、その足で、深夜を過ぎてからアドニスに向かったのだった。
倫は許せなかった。自分が藤原を愛していると知ったと同時に失恋したのだ。藤原の最後の言葉がこだました。…目の前の倫だけを愛していると…でもノラ猫の倫の心にそれは届かなかった。信じられなかったのだ。
倫は一人、ひっそりと眠る時、時々、幼いころ、一人で眠っていた事を思い出した。(藤原…)倫は藤原の肌が恋しくて泣いた。そしてこれからの行く末を考えた。藤原を忘れられる事がしたい。藤原を忘れられる場所に行きたい、と思った。海外…倫はひらめいた。俺は悪魔。またしても倫の中に宿った人格。そして以前から行ってみたいと思っていたイギリスに重点を置いたのだ。(俺は…チーコ。何処へいくのか自分自身わからない)倫は自分の事を堕天使だと言った藤原を思い出した。(駄目だ。ここにいると藤原から逃げられない…)倫は荷造りをはじめた。倫の心は決まっていた。藤原に買って貰った服はどれも思い出深く、それも倫を切なくさせたが、倫は容赦なくそれらをバックに詰め込んだ。そして鍵をテーブルの上に置き、昨日は夜にマンションを抜けてきたのだった。その晩、その足で、深夜を過ぎてからアドニスに向かったのだった。
