
たまゆらの棘
第2章 燃ゆる日々
倫はママに藤原と別れた事は内緒でアドニスに顔を出した。
「倫。どうしたの、その荷物…」ママは倫の荷物を見て言った。あれから麻布のマンションに行き、服などの倫の全財産を大きなバックひとつにまとめて出てきたのだ。「ママ…お願いがあって来た。…ママにっていうより…ごめんなさい。ママの旦那様に。」倫は言った。「なんなの?急に改まって。」「急なんだけど、僕、海外に行こうと思って。藤原さんも…いいって言ってくれた…」倫は藤原の名前を言って、嘘をついている自分の胸がズキッとした。ママは大層、驚いた。「でも、さすがね。藤原さん、太っ腹だわ。倫を本当に愛してるのね。それに、藤原さんなら海外の倫に会いに行くことだって出来るし。」「それで…お願いなんだけど…僕のパスポートを…作って欲しいんだ…旦那様なら偽造で作れるんじゃないかと思って。」「あら。なんだ。そんな事。…出来ると思うわよ。倫。で。行く先はどこなの?」ママは嬉々として聞いてきた。
「…ロンドン。イギリスだよ。」
「まあ、素敵ね!でも…ヨーロッパは厳しいから…パスポート…作れるかしら?…いいわ。聞いてあげる。」ママは誇らしげに言った。倫は精一杯、昨日、涙で腫れた目を嘘の輝きで凝らしママに礼を言った。ほの暗い店内では、倫の泣きはらした顔も、そんなに目立たなかったが、何か、倫が元気がないのを、ママは察知していた。…そしてママは言った。
「…倫。…必ず帰って来るのよ。藤原さんのところに。」
「倫。どうしたの、その荷物…」ママは倫の荷物を見て言った。あれから麻布のマンションに行き、服などの倫の全財産を大きなバックひとつにまとめて出てきたのだ。「ママ…お願いがあって来た。…ママにっていうより…ごめんなさい。ママの旦那様に。」倫は言った。「なんなの?急に改まって。」「急なんだけど、僕、海外に行こうと思って。藤原さんも…いいって言ってくれた…」倫は藤原の名前を言って、嘘をついている自分の胸がズキッとした。ママは大層、驚いた。「でも、さすがね。藤原さん、太っ腹だわ。倫を本当に愛してるのね。それに、藤原さんなら海外の倫に会いに行くことだって出来るし。」「それで…お願いなんだけど…僕のパスポートを…作って欲しいんだ…旦那様なら偽造で作れるんじゃないかと思って。」「あら。なんだ。そんな事。…出来ると思うわよ。倫。で。行く先はどこなの?」ママは嬉々として聞いてきた。
「…ロンドン。イギリスだよ。」
「まあ、素敵ね!でも…ヨーロッパは厳しいから…パスポート…作れるかしら?…いいわ。聞いてあげる。」ママは誇らしげに言った。倫は精一杯、昨日、涙で腫れた目を嘘の輝きで凝らしママに礼を言った。ほの暗い店内では、倫の泣きはらした顔も、そんなに目立たなかったが、何か、倫が元気がないのを、ママは察知していた。…そしてママは言った。
「…倫。…必ず帰って来るのよ。藤原さんのところに。」
