
たまゆらの棘
第1章 幼き日々
義父は「いいこだ…いいこだ」を繰り返し、倫の頭を撫でた。痛みにとらわれもう何も抵抗出来なかった。義父は激しさを一層増して、倫を責め立てた。倫は激痛の中で記憶を失った。失神したのだ。義父はそんな倫を見て一方的に果てた。
義父は母親が妊娠すると、ますます倫をなぶりものにした。必ず誰もいない密室で。しかし、約束は果たした。日本舞踊の稽古を再開させてくれたのだ。
倫にとって学校は行くべき所のみで、それ以外の何物でもなかった。日舞の稽古は楽しく、新たな師匠からも随分と目をかけられ、いずれは内弟子に…とまで言われる程に可愛いがられた。しかし、倫の普通のこどもとしての明るさに欠けた異様な暗さ、影に気付いたのも、この師匠だった。ある時、母親は師匠から、何か学校か家庭に問題があるのでは…と問いかけられたが、母親は毅然として師匠に向かって「あのこには何も問題ありません!」と突き返した。二歳になる長女を抱いて。
義父は母親が妊娠すると、ますます倫をなぶりものにした。必ず誰もいない密室で。しかし、約束は果たした。日本舞踊の稽古を再開させてくれたのだ。
倫にとって学校は行くべき所のみで、それ以外の何物でもなかった。日舞の稽古は楽しく、新たな師匠からも随分と目をかけられ、いずれは内弟子に…とまで言われる程に可愛いがられた。しかし、倫の普通のこどもとしての明るさに欠けた異様な暗さ、影に気付いたのも、この師匠だった。ある時、母親は師匠から、何か学校か家庭に問題があるのでは…と問いかけられたが、母親は毅然として師匠に向かって「あのこには何も問題ありません!」と突き返した。二歳になる長女を抱いて。
