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たまゆらの棘

第4章 再臨

次の日、足は自然と昨日の教会へ行っていた。静けさの中で、死ぬまえに、悪魔の自分を懺悔したい気持ちになっていた。

ひざまずき、懺悔をする…まだ父さんが生きていた頃に、母親と教会に行っていた事を思い出し、涙が流れてきた。

するとまた、赤ん坊の声がした。

倫が涙をふいて振り向くと、後ろに昨日の少女がいて、倫に軽く会釈した。倫もつられて軽く、会釈した。

少女が近付いてきたので「姉弟?」と倫は聞いた。
「私の子よ。」少女が答えた。
「え…この子、君の子?」あまりに少女が幼いので思わず倫は聞いた。どう見ても十五歳くらいだ。

「はい。」静かだが、はっきりした声。少女はハンカチを取り出して倫に渡した。「…あ」倫は戸惑ったが、涙をそれで拭いた。年があまりに離れているせいなのか、何故かその少女とは普通に接する事が出来た。

「大丈夫?」少女はにっこりと笑った。こんな年下にこんな事を言われる事が自分自身、情けなくて、可笑しくては、倫は思わず自分を「ハハっ…」と笑った。「…ごめん、ありがとう。」ハンカチを返して言った。

倫はすぐさま自分の正体を言った。
「俺…女、嫌いなんだ。でも不思議だな。…君からは女の匂いはしないよ。だからって男の匂いもしないけど。」倫は笑った。
「…不思議。私もあなたから男を感じない。…普段は話すのも怖いのに…」
「俺、…ゲイだから…」フッと倫は笑った。「ゲイ?」
「そ。異性とセックス出来ないんだよ。」少女は少し黙って、
「私ね。十四の時にこの子、産んだの。私自身はこの教会の施設あがりよ。」そして「あなたは…怖くない。」少女は続けて言った。

「どうして怖いって言うの?」倫は聞いた。

「レイプされたから。十三の時に。」少女は言った。
倫に戦慄が走った。嫌でも麗を思い出した。

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