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第9章 裏と表

「み、見てたんですか……」

「ああ、見てた」

息が止まりそうになって、律になんて言えばいいのか私は悩みながら言葉を探す。

「昨日の夜は……
いろいろあって弱ってた所を啓太君に見付かってしまって、それで……」

「弱ってた? なんかあったのか」

そう聞かれ、理由に付いては説明する事を躊躇う。野原が律を好きだと言ったから、泣いていたなんてとても言えない。

黙っていると律の溜め息が聞こえ、私はビクリと肩が跳ねた。

「言いたくないなら、それでもいい。でもな、名取が好きなら止めとけ、彼奴は裏がありそうだ」

違う好きじゃない、そう言いたいのに
昨日のキスされた事を思い出すと目頭が熱くなった。

ポタリと、瞳から落ちた涙。
同時に律が声を出していた。

「おいおい、なに泣いてんだよ……
そんなに彼奴が好きなのか?」

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