テキストサイズ

オレンジ

第5章 離したくない手

その瞬間、此方を向いた彼の表情が弱冠引きつり私の方へと伸びた手だった。

背中がベットに沈み
あっという間に、私を見下ろす瞳から
目が逸らせなかった。

ニヤリと黒く笑う

「誰に向かって言ってんだぁ――?」

「へ、えっ、あ、あの……」

カミカミの私は焦りながら、必死に両手で彼を退かそうとするが無理で

彼の綺麗な顔が近付くにつれ
私の心臓が口から出そうになっていた。

覚悟を決め
ギュッと両目を瞑ったのだが

ゴツッン

音と同時におでこに感じた鈍い痛みに、ビックリして目を開いた。

すぐに目にした彼の表情が意地の顔になっていて

「バーカ、なに本気にしてんだよ」

そう言うと、さっと、私の上から退いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ