君がくれたぬくもり
第52章 ユルサナイ
「岳ちゃんあっち行こうよ!」
浮輪の中であたしは岩場を指差した。
岳ちゃんの視線を陽菜ちゃんから反らす為に…。
すると岳ちゃんは叫んだ。
「陽菜!!」
何が起こったかわからない。
岳ちゃんは沖の方に向かって水の中を走る。
あたしは岳ちゃんを止めた。
「えっ、岳ちゃんどうしたの!?待ってよ!!」
しかし岳ちゃんはあたしを突き飛ばし、泳ぎ出した。
あたしはただ呆然としていた。
―――――……
しばらくして、岳ちゃんは慌てて戻ってきた。
その逞しい腕の中には、
顔を真っ青にした陽菜ちゃん…
う……そ………?
息………
してなくない…?
「やだ…陽菜ちゃん?!」
「陽菜ぁ!!!!」
「きゅっ、救護の人呼ばなきゃ!」
みんなが慌てる中、
岳ちゃんは陽菜ちゃんを砂の上に倒し、その上に跨がる。