君がくれたぬくもり
第56章 離れないで
その時だった。
「陽菜!!」
人混みの中から
岳の声がする。
「岳……?岳っ!」
陽菜も叫んだ。
陽菜に気づいた岳は、慌てた様子で駆け寄ってきた。
そして強く抱きしめられる。
「はぁっ……いた……っ…」
息切れしながら、岳は安堵の表情を浮かべる。
「すっげえ心配した…!」
その瞬間、一瞬止まっていた涙がまた溢れ出した。
「岳の……ばかぁっ…!」
「ん……ごめん…な…」
岳はもう一度陽菜をギュッと抱きしめると、
唇に優しいキスをした。
今日初めてのキスは、涙の味だった。