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「ありがとう……光太君……」

気持ちに答えられない千紗は顔を姫野の胸に押し付けて少しだけ涙をこぼした。

姫野はその頭をしっかりと抱き寄せ、黒くきれいな髪をゆっくりと撫でていた。

「僕は待ってるよ。千紗が振り返ってくれるまで、いつまででも……」


「ごめん……私光太君が言う通り狡い人間なの……光太君の気持ちをもてあそんで……」

「ううん……いいよ。僕は好きでそうしてるんだから。それに千紗の心のどこかにいれれば、まだチャンスはあるから」


二人はそのまま抱き合って互いの鼓動を聴くように黙っていた。

互いの身体を弄り合うこともなく、ただ相手のドクンドクンという鼓動を聴いていた。

やがて二人は落ち着きを取り戻し、安心の中で眠りに落ちていた。