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それでも恋するドM娘

第8章 代用品

千紗はその場にいることすら恐ろしくなり、部屋を飛び出した。

アルバムも写真もそのままにし、鍵さえかけずに寺居の家を飛び出していた。


あてもなく無我夢中で走り続けた。

息が切れてもなお走り、人にぶつかりながら、車に跳ねかけられながら、ひたすら走る。


気がつくと海の防波堤まで来ており、それをよじ登り、テトラポットの上に座ると声をあげて泣き出した。

人目も憚らず、ひたすら泣いた。

『そんなのって……酷いよっ……』

寺井にとって自分は過去の彼女の代用品に過ぎなかったのだ。

忘れられない過去を懐かしみ、慰めるだけの身代わりだった。

それなのに、あんなに浮かれて……

押しかけ女房みたいに勝手に世話を焼いて……


悔しくて、悲しくて、情けなかった。


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