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それでも恋するドM娘

第8章 代用品

寺居の家に行って謝るべきか、それともそっとしておくべきか。

そんなことを悩んでいるうちに放課後の教室はすっかり人気がなくなっていた。


保留。


問題の先送り。


現実を直視する勇気のなさ。


千紗の悪い癖が顔を出しはじめる。

千紗は寺居の家に謝りに行く勇気が出ないまま、教室をあとにした。

そしてその足は自然と美術室の方へと向かっていた。

「し、失礼します……」

千紗は美術の時間以外立ち入ったことのない美術室へと入った。

室内からの返答はなく、昨日の富士見が一人、石膏に向き合ってデッサンをしていた。

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