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それでも恋するドM娘

第8章 代用品

その顔にはもう、スケッチをしていた時の切れるような鋭さや射抜くような視線はなかった。

いつものチャラけた、真剣みを感じない富士見であった。

富士見の態度で千紗もえっちなモードからちゃらけたモードへと切り替わっていた。

「そんなこと言って本当は凄いえっちが下手なだけとかじゃないんですか、先輩」

「馬鹿いってもらっちゃ困るよ。僕はね、佐倉さん。写生もうまいけど射精はもっと得意なんだよ」

「寒っ……色々と最低ですね、富士見先輩って……」

千紗は笑いをかみ殺した表情でそういうと富士見もニヤニヤと笑い返してくる。

それから千紗は服を着て、二人で軽口を叩きあいながら駅まで一緒に歩いていった。

その時間だけは千紗も失恋の悲しみを忘れていた。

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