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恋のかたち

第6章 夏休み

すぐに言葉に出来ず、首を左右にブンブン振った

赤らめた顔は走ったせいだけではない

「・・仕事は?」
ようやく出た一言だった
「ああ、三時間くらい抜けてきた。朝が早かったんだ、いいだろこれくらい」
秋豊が言い終わるや、携帯の着信を知らせる電子音がバイブの振動音と共に、2人の間に流れる

すぐに電話に出た秋豊
「すぐ戻るよ」
しばらく話を聞いた後で一言告げると電話を切った

相手はまだ話をしているようだったが・・

「乗れよ」
助手席に回り、優愛をリードする秋豊に少し遠慮しながら座席についた

秋豊は、後部座席からファーストフードの紙袋を取り出した

「冷めてるけど食えよ」
「ありがとうございます」
受け取り、中をみる
チーズバーガーと氷が溶けた様子のジンジャーエール、しなびたフライドポテトが入っていた

「長く待たせてしまってごめんなさい」
シュンとして言う優愛

走り出した車

「俺がちゃんと言わなかったからな・・悪かったよ」

少し照れくさそうな雰囲気の言葉に優愛は、心があったかく感じた

「ずっと待っててくれてたんですね。ごめんなさい、正直とっても嬉しいです」
優愛も照れた笑顔で聞こえるように呟くと、ポテトを一つ口に入れ、おいしっと言った

炭酸が抜け、甘味の増したジンジャーエールも、冷たくチーズが固まったバーガーも、今まで食べたファーストフードで一番不味くて、最高に美味しいと感じた

矛盾した味と心に少し笑ってしまった

「変な奴・・」
少し呆れながらも、横目で見てきた秋豊の顔は綻んでいた

その顔にキュンと心臓がなった
誤魔化すように、ジンジャーエールを啜った

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