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添い寝フレンド

第3章 添い寝フレンド(3)

お酒を飲んでいたリビングの引き戸を開けると洋室があって、壁際にベッドだけがポツンと置かれている。
そこにもネオンの光は届いてわずかに明るく、また表通りに近いせいもあって喧騒の雰囲気もより大きく感じた。


彼女がベッドの壁際まで身を寄せて寝転ぶ。
手前に生まれたスペースは僕のためのものなのだろう。

僕は彼女と微妙な距離を開けて仰向けになった。
ここで僕が男の欲望を彼女に吐き出してもきっと彼女は抵抗しない。
そんな自信はあったけど、くすんだ焔はすでにワインと一緒に飲みこんでいた。
僕はネオンの光で揺れる天井をぼんやりと見つめるだけだった。


しばらくすると彼女が身を寄せて僕のシャツの袖を小さく掴んだ。

僕は首だけ動かして彼女を見る。
それまでの強気な瞳は瞼で閉じられていて、子供のような無垢な寝顔が左腕に寄り添っていた。


指の背で彼女の頬に触れる。
彼女が目を開けてすぐに閉じる。

「ありがと。」

短く呟いて僕の体に腕を回す。
彼女の手は僕のシャツをめくり直に肌に触れた。

しなやかな指先が僕の上半身をすべって脇腹へと添えられる。
僕は相変わらず仰向けのままで吸い付くような彼女の掌を感じていた。


僕も彼女を腕枕して肩や腕に指を添えた。
彼女の頭を持ち上げたとき、シャンプーの匂いが鼻をくすぐって思わず髪の毛にキスをする。



肌が触れ合うこの数分が、お酒を酌み交わした数時間よりも何倍もお互いが求めているものを分かり合えている気がした。


僕に触れる指先は微かに動いていて、そのわずかな摩擦がたまらなく気持ち良いことを彼女に伝えた。
彼女はそう、と気のない返事をして変わらず僕に優しい刺激をくれた。

一定の範囲で動くやわらかな指は、僕が一番落ち着けるリズムを知っているようだった。
外のざわめきは耳に入ってこなくなり、代わりに穏やかな鼓動音が全身を包んだ。

僕が眠るまで彼女はずっと僕の体を撫でてくれた。

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