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激愛~たとえ実らない恋だとしても~

第6章 第二話・其の弐

「殿、いつか、俊昭さまも殿の真のお気持ちをお判り下さる日がくるやもしれませぬ」
 美空は心から願わずにはいられない。
 孝俊と俊昭が判り合える日が来ることを、美空を成り上がり者と蔑む人たちが孝俊の妻として認めてくれる日が来ることを。
「その日を待ちましょう」
 美空は智島にも言ったのと同じことを孝俊にも言う。
 ひたすら待とう、無理に他人の心を変えようとするのではなく、変えるための努力をしながら、辛抱強くその日を待つのだ。
「そうだな」
 孝俊が頷くと、そっと傍らの美空を引き寄せる。美空もそっと良人の肩に身をもたせかけた。
 竜胆の花が涼やかな花を咲かせている庭を二人並んで座り、寄り添い合って、いつまでも眺めていた。
 美空の身に纏う打掛の裾には萩の花と月が金糸、銀糸で大胆に縫い取られている。地は紅色、下に着た小袖は同系色の薄紅色で、それが美空の白い膚を更に際立たせていた。
 十八になる若きご簾中は、まさに庭に盛りと咲く竜胆が露を帯びたように美しく可憐で、その膚は白き玉を水に落としたよう。
 その微笑ましい姿を、智島が少し離れた場所から嬉しげに見守っていたことを美空は知らない。

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