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喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編

第3章 ♣海ほたる舞う夜♣

 ♣海ほたる舞う夜♣

 その翌日、悠理は初めて漁に出た。〝第二潮(うしお)丸〟に乗った網元以下、総勢十三人に混じり、悠理は海の男の生き様を間近に見ることになった。
 魚との知恵比べは頭脳戦といっても良い。網を引き上げるタイミング、どこにより多く集まっているか、等々。悠理はまだ見習いにすぎず、雑用しかさせて貰えないが、それでも、何かしら学ぶところはあった。
 ボウとしていると、たちまち漁師たちから怒声が飛んでくる。そうやって叱られることで、また新たな知識を得るのだ。
 数時間に及ぶ漁を終えて戻ってきた彼は、すっかり疲れ果てていた。しかし、相反して、心はすっかり高揚していた。漁から戻ると、すぐに獲った魚を競り市場に運ぶ。息をついている暇はない。更に競りの様子を傍らで見学し、売買の実態を学ぶのだ。
 それが終わって、漸く家に戻ってこられる。漁師たちも網元に挨拶し、各々の家に帰ってゆく。これから皆、しばらくは仮眠を取り身体を休めるのだ。
 網元が自室に引っ込んだのを見届けてから、悠理は外に出た。眠ろうとしても、どうにも眠れそうにない。初めて漁を目の当たりにして、神経が高ぶって眠るどころではないのだ。
 なので、近くに小さなコンビニがあったことを思い出し、煙草でも買ってこようと思い立ったのである。
 今日、眞矢歌は勤務先に出かけていた。高校中退以来、ずっと郵便局に勤務していた彼女だが、三年前から近所の保育園に保育士として勤め始めたと聞く。昨日、一昨日は日曜と海の日が重なり、連休だった。そのため、保育園も休みで、彼女も自宅にいたのだ。
 網元の話では、眞矢歌は通信教育で保育士の勉強をし、試験を受けて合格したそうである。いかにも真面目で努力家の彼女らしい―と、悠理はまた眞矢歌に惹かれてゆく自分を感じていた。

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