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夢幻の蜃気楼

第4章 “蒼き魔王”

恐怖で足が竦む。腕を捕らえられ、顎を持ち上げられ、僕は何も太刀打ち出来ない。

何でこうなったのか。どうしてこんな目に合っているのか。
ふと目にはいるのは二人のバックにある石段。

……嗚呼、そうだ。
僕はあの石段から落っこちたんだ。
そうか、石段が元凶なんだ。


辺りは真っ暗で僕たち以外、人影はない。
こんな時間に誰かが通るなんておそらく奇跡に近いだろう。
しかし今はその奇跡に賭けるしか術がない。とにかくこの恐ろしい状況から逃れられるのならば……。

だけどやはりそれは起こることはない。
赤毛男が仲間の髑髏のピアスをした男へと顔を向け、無言で合図を送る。途端に捕らえられた腕があげられる。
「おら、立てよ!」
髑髏のピアス男の荒げた声に、びくりと震えてしまった。

もうどうすることも出来ない。無力な僕が彼らに抗う術なんて最初から持ち得ていないんだ。


諦めて従う為に立ち上がろうとした瞬間、それは突然に奇跡は起こった。





「おい、そこで何してんだ?」


聞き慣れない、若いと思われる声が辺りに凛として響いた。

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