
夢幻の蜃気楼
第5章 違和感
僕を見下ろすような目線を感じ、落ち着かない気分になる。
「お前さ、弱いなら一人で出歩くなよ」
大仰に溜息までつけての言われようだ。
その言い種にほんの少し頭にきたけど、でも彼の言うことは間違ってはいない。彼がいなければ、きっと今頃はあの二人にどこかに運び込まれていただろう。
だけど誰が予想しようか。金品目的ならまだしも、まさか身体目当ての拉致行為なんて思いもしないだろう。だってどうみても僕は間違いなく男だ。
だけどそんなのは今となっては言い訳にもならない。現に僕はあの二人に襲われ、そしてこの少年に助けられた。それが事実だ。
「……ごめん……」
ちょっと理不尽だったけど、彼の言ってることも正論だったので素直に謝る。
僕が謝罪したこと後、彼は一瞬面食らったように沈黙を守った。僕が訝しげに彼を覗き込めば、すぐに覚醒し、今度はニヤリと笑みの形になる。そのいやらしいと感じさせる笑みに、嫌な予感しか浮かばず、身体を引く体制にあっても仕方のないことだと思う。
「お前、変わってるな」
率直に出た僕への感想がそれか。
どこが? 聞き返そうと思ったが、あえて触れないことにした。
「礼を言うなら、同じ口を使うとしても違う方法でしてくれた方が伝わるんじゃねえの?」
急に意味のわからないことを言う少年に、僕は半分固まっていた。
「……ごめん、よく意味がわからないんだけど……」
正直に述べれば、今度は少年が眉を寄せる。
だけどすぐにすっと長い人差し指を伸ばし、僕の唇へと触れる。
「言葉じゃなく、形でってことだよ」
ますます意味不明な発言に、僕の脳みそがパニックに陥りそうになっていた。
「…………は?」
やっと出たのは何とも情けない一文字と、おまけのクエスチョンマークだった。
「お前さ、弱いなら一人で出歩くなよ」
大仰に溜息までつけての言われようだ。
その言い種にほんの少し頭にきたけど、でも彼の言うことは間違ってはいない。彼がいなければ、きっと今頃はあの二人にどこかに運び込まれていただろう。
だけど誰が予想しようか。金品目的ならまだしも、まさか身体目当ての拉致行為なんて思いもしないだろう。だってどうみても僕は間違いなく男だ。
だけどそんなのは今となっては言い訳にもならない。現に僕はあの二人に襲われ、そしてこの少年に助けられた。それが事実だ。
「……ごめん……」
ちょっと理不尽だったけど、彼の言ってることも正論だったので素直に謝る。
僕が謝罪したこと後、彼は一瞬面食らったように沈黙を守った。僕が訝しげに彼を覗き込めば、すぐに覚醒し、今度はニヤリと笑みの形になる。そのいやらしいと感じさせる笑みに、嫌な予感しか浮かばず、身体を引く体制にあっても仕方のないことだと思う。
「お前、変わってるな」
率直に出た僕への感想がそれか。
どこが? 聞き返そうと思ったが、あえて触れないことにした。
「礼を言うなら、同じ口を使うとしても違う方法でしてくれた方が伝わるんじゃねえの?」
急に意味のわからないことを言う少年に、僕は半分固まっていた。
「……ごめん、よく意味がわからないんだけど……」
正直に述べれば、今度は少年が眉を寄せる。
だけどすぐにすっと長い人差し指を伸ばし、僕の唇へと触れる。
「言葉じゃなく、形でってことだよ」
ますます意味不明な発言に、僕の脳みそがパニックに陥りそうになっていた。
「…………は?」
やっと出たのは何とも情けない一文字と、おまけのクエスチョンマークだった。
