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夢幻の蜃気楼

第2章 石段

カラオケから十分もしない場所に僕のマンションがある。僕はそこで一人暮らしをしている。

高校のために関東地方に、たった一人出てきた。
元々僕は東北地方の、山に囲まれた田舎の出身だ。
僕に両親はいない。僕が物心つくまえに交通事故で亡くなっている。僕を育ててくれたのはお父さんの両親、つまりおじいちゃんとおばあちゃんだ。代々受け継いだ農家で、小さい畑を守りながら質素に暮らしていた。
本当は年老いた二人のために側にいて、僕が二人の面倒をみなくちゃいけない。分かっているけど、僕にはある目的があった。譲れない目的。
だから僕は都内の高校を選び、二人を説得して一人暮らしをしている。

だけどそれもあとわずか。あと数ヶ月で卒業する。卒業したら僕は田舎に帰る。そして僕も働くつもりだ。いつまでも甘える訳にはいかないし、おじいちゃんとおばあちゃんのことを考えると、我が儘を押し通すことなんてできない。


色々と将来のこととか考えているうちに、僕の前に少し長い石段が見えてきた。

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