夢幻の蜃気楼
第2章 石段
20XX年の真冬。夜間はさらに寒さが厳しい。
「じゃあな、蓮(れん)! 気をつけて帰れよ」
友達数人と楽しんだ数時間のカラオケが終わり、みんなと反対方向に帰る僕は、みんなの背中を見送ってから夜の道を一人歩く。
あと数ヶ月で高校卒業を迎える僕の名前は奥村 蓮(おくむら れん)。
あと何回、仲間たちとふざけたり遊べるんだろう?
ふと頭上を見上げる。真っ暗な夜空に点がいくつか申し訳程度にある星。なんか余計に淋しくなってくる。
「うー、さむ……」
思わず手袋してない両手をこすりあわせ、息を吹きかける。