夢幻の蜃気楼
第2章 石段
***
「…………ん、……きろ……」
声が聞こえる。それもとても懐かしい声。優しくて僕を包んでくれるような声に、僕は心当たりがある。
「ほら、いつまで寝てるんだ?」
揺さぶられている感覚がある。
あまりにも僕が起きないから呆れてるんだろうな。
「蓮、もう起きろよ」
嗚呼、やっぱり孝次兄ちゃんだ。
近所に住んでいた孝次兄ちゃんは、いつだって僕のヒーローだった。
カッコよくて頭が良く、何よりも優しい穏やかな性格の持ち主だった。僕はそんな孝次兄ちゃんを尊敬していた。
僕と八歳離れていたためか、両親のいない僕をよく可愛がってくれた。いつも笑顔で接してくれて、僕の兄的存在だった。
だから孝次兄ちゃんが高校のため、東京にでると聞いた時、すごく寂しくて泣いたこともあった。
孝次兄ちゃんが東京にでて一年後、彼の両親の元にある知らせが入る。
孝次兄ちゃんが行方不明になったと聞かされたのだ。
すぐにおじさんとおばさんは孝次兄ちゃんの住むアパートに向かい、あらゆる可能性にかけて必死に捜したが、情報はなく、今も消息不明のままだった。
村の中には孝次兄ちゃんはもう死んでいると噂する者もいた。老人たちの中では神隠しにあったのだと口にする者もいた。
だけど僕はどうしても諦められなかった。だから僕も東京にでる決意をした。東京にでて、孝次兄ちゃんを捜し続けると固く誓った。
「…………ん、……きろ……」
声が聞こえる。それもとても懐かしい声。優しくて僕を包んでくれるような声に、僕は心当たりがある。
「ほら、いつまで寝てるんだ?」
揺さぶられている感覚がある。
あまりにも僕が起きないから呆れてるんだろうな。
「蓮、もう起きろよ」
嗚呼、やっぱり孝次兄ちゃんだ。
近所に住んでいた孝次兄ちゃんは、いつだって僕のヒーローだった。
カッコよくて頭が良く、何よりも優しい穏やかな性格の持ち主だった。僕はそんな孝次兄ちゃんを尊敬していた。
僕と八歳離れていたためか、両親のいない僕をよく可愛がってくれた。いつも笑顔で接してくれて、僕の兄的存在だった。
だから孝次兄ちゃんが高校のため、東京にでると聞いた時、すごく寂しくて泣いたこともあった。
孝次兄ちゃんが東京にでて一年後、彼の両親の元にある知らせが入る。
孝次兄ちゃんが行方不明になったと聞かされたのだ。
すぐにおじさんとおばさんは孝次兄ちゃんの住むアパートに向かい、あらゆる可能性にかけて必死に捜したが、情報はなく、今も消息不明のままだった。
村の中には孝次兄ちゃんはもう死んでいると噂する者もいた。老人たちの中では神隠しにあったのだと口にする者もいた。
だけど僕はどうしても諦められなかった。だから僕も東京にでる決意をした。東京にでて、孝次兄ちゃんを捜し続けると固く誓った。