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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

「そのとおりだよ。そなたが兄上の志を常に忘れず、立派だった兄上に恥じない生き方をすれば、兄上はそなたの中で生きられなかった人生を、叶えられなかった夢を実現できる、私はそのように考えるが」
「大切なことを教えて下さり、ありがとうございます」
 心からの礼を述べると、準基が面映ゆそうに笑った。
「別に礼を言われるほどのことではない。そなたの方こそ、兄上を慕っていたのだろう、今のそなたの言葉を聞いていたら、よく判る」
 準基は悪戯っぽい表情で肩を竦めた。
「もし、兄上が生きておいでであったら、私は兄上に殺されていたかもしれない」
「何故ですか? 兄がどうして若さまを?」
 浄蓮が愕いて訊ねると、準基が明るい声を上げた。
「そなたのように可愛い妹を持ったら、誰でも不安で堪らないであろうよ。私がそなたの兄であったしても、男と二人だけで遠乗りに出たと知れば、連れだした男の首を締め上げてやるかもしれない」
 言い終わらない中に、準基が再び白馬の腹を蹴った。
 白馬が風を切って走り始める。
「しっかり掴まって。これから目的地まで、突っ走る」
「目的地って、若さまがおいでになりたかったのは、ここではなかったのですか?」
 準基にしがみつきながら訊ねると、彼は笑った。まるで、計画した悪戯があと少しでうまくいきそうだと胸躍らせる子どものようだ。
「もう少し先だよ」
 更に速度が上がった。この程度の速さなら、普通に乗っていたのであれば何ということはないが、今は女の格好で横座りになっている。うっかりしようものなら振り落とされそうだ。
 悲鳴を上げて準基の胸に身をすり寄せると、準基はそれが嬉しかったらしく、わざとまた速度を上げる。

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