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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

 ふと頬に冷たいものが触れたような気がして、浄蓮は空を仰いだ。
「どうやら、降ってきたみたいだな」
 準基も同じように空を見上げている。
「つい先刻まで、あれほど良い天気だったのに」
 恨めしげに呟いている。
「山の天気は変わりやすいといいますから、仕方ないのかもしれません」
 ここは山の上ではないにせよ、もうすぐ手前には山々が迫っているのだ。あれが、恐らくは〝天上苑〟伝説の娘が生命を絶ったという山だろう。
「とにかく、どこか雨を凌げる場所を探そう。大昔には両班の屋敷があったのかもしれないが、今は、ここら一帯には誰も住んではいないはずだよ」
 準基が再び浄蓮を抱き上げて馬に乗せ、自分も馬上の人となった。鞭を当てると、白馬は物凄い勢いで走り出す。

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