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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

「はい、そこでくるっと回って」
 女将の声がひときわ高くなる。
 浄蓮は言われるがままに、少し腰を屈めながら、優雅に一回転した。
「はい、もう一度回って」
 女将の指示は絶え間なく飛ぶ。
 浄蓮の身体がまた、しなやかにくるりと回った。
「ちょっと、止まって。何なの、今のは。何度言わせるつもりなの? 今のところは二回続けて回るって、あれほど言い聞かせてるのに、何で言われたとおりにできないの。お前は、いつも同じ場所で動きが止まるのよ。素人には判らないくらいのズレでも、見る人が見れば、すぐに判る。玄人が見て、非の打ち所のない舞が舞えてこそ、初めて一人前と言えるのよ。舞一つ満足に舞えないで、妓生と言えるの!?」
 浄蓮が妓生見習いとして披露される日が近づいていた。基本的に、見習いの間は客は取らず、先輩である妓生と共に宴席に侍り、実技を積んで勉強してゆく。その修行期間を経て、晴れて一人前の妓生になるのだ。
 今までと異なり、浄蓮は編んで垂らしていた髪を後頭部で一つに纏めている。これが成人した証でもあった。
 衣装もこれまでのように質素なものではなく、紅いチョゴリに、緑のチマは絹の仕立てで、ふんわりとひろがったチマの裾には手描きで金の花が大胆に入っている。
 十五歳にしては少し地味かもしれないが、匂い立つような若さ、美貌をかえって引き立てていた。
 艶やかな黒髪にも翠玉(エメラルド)の簪が挿してあり、浄蓮が扇をひろげて軽やかに舞う度に、深い緑の玉石が燦然と煌めく。簪もチマチョゴリも女将自らが選んだものだ。この衣装で、浄蓮は晴れの日を迎える。
 もちろん、見習いとして披露されるその日は、髪はもっと高く複雑な形に結い上げ、妓生独特のあの髪型になる。

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