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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 だが、と、思う。皇秀龍は本気で浄蓮を妻に迎えるつもりなのだろうか。皇氏ほどの名家が妓房の下働きを嫁に迎えるはずはない。
 だとすれば、秀龍は浄蓮を側妾にでもするつもりか。もっとも、平然と自分から妓生になりたくて妓房に入ったと言い切ったほどの少女である。両班の側妾になるくらい、何といったことはないのだろうか。
 自分なら、準基であれば、あの美しい娘を側妾になどはしない。むろん、母は猛反対するに違いないだろうが、浄蓮を何としてでも妻に迎える。この国では身分が違えば婚姻は許されないことになってはいるものの、そんなことは、父に頼んで浄蓮を親戚の両班の養女にして貰えば良いだけの話だ。
 もとより、父を説得できればの話ではあるが。もっとも、父は母の尻に敷かれてはいるが、善悪の判断がつかない人ではないし、情理も備えている。準基の浄蓮に対する想いの真剣さを知れば、敢えて反対するとは思えなかった。
 奔放なのか、それとも、現実を認識できていないのか。
 あの浄蓮について、準基は今一つ掴みきれない。普通、妓房に身を売るのは、金を得るためだ。なのに、あの娘は金のためでもなく、ただ華やかな衣装が着たいから妓生になりたいのだと言う。
 綺麗な衣装が着られれば、どこの誰とも知れない男から男へと脚をひらくのも構わないとでも言うのだろうか?
 浄蓮の白い身体を嫌らしげな脂ぎった男が組み敷いている姿が思わず瞼に浮かび、準基は思わず拳を握りしめた。
 私なら絶対に、そんなことはさせない。
 あの娘一人を守り、妻として生涯、大切に慈しんでゆく。
「―準基?」
 遠くから聞こえているようだった声が突如として、間近に聞こえた。
 準基は眼を見開き、兄を見つめた。
「どうした? 何か物想いに耽っているようだったが」

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