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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 準基は、幼い頃から自分の顔が好きではなかったが、成長してからは見るのも嫌なほど大嫌いになった。母によく似たこの顔を鏡で見る度、反吐が出そうになる。
 母は今、四十だが、到底、二十三歳になる息子がいるようには見えない。三十代前半といっても十分に通用する若々しさを保っている。
 準基の男にしてはやや大きな黒い双眸も、しなやかな細い眉も、すべてが可憐な面立ちの母親の造作を受け継いだ証であった。単に母に似ているからというだけでなく、この顔はどう見ても、良い歳をした大人の男にはふさわしくない。
 それでも、幼い頃は〝可愛い子だ〟と褒められて嬉しかったものの、二十三にもなって〝可愛い〟と言われて(流石に、良識ある人はこの発言を控えるだけの分別はあるが)、嬉しいはずがない。少しでも男らしく見せようと、一年前からは鼻の下にうっすらと髭をたくわえているが、どれほどの効果が出ているのか知れたものではない。
 あの娘にも、この女顔についてどう思われたかを考えただけで、胃が痛くなりそうだ。
 そう、翠月楼の下働きをしているといった、あの娘、浄蓮。
 まだ十五だというのに、早くも男心を蕩かすような妖艶さを漂わせている。かと思えば、年相応の無垢な少女の顔を見せて、準基の心を余計にかき乱す。
 数日前、意を決して翠月楼を訪れたものの、結局、結果は悲惨なものに終わった。
 浄蓮には既に恋人がいたのだ―。しかも、その恋人だという男と浄蓮はひそかな逢瀬を重ねている最中に、自分はのこのこと訪ねていったのだ。
 相手の男は確か、皇氏の跡取りだと聞いた。皇秀龍、今を時めく礼曹判書の嫡子であり、秀才の誉れ高い貴公子。秀龍は学問だけでなく、武術にも秀でており、来年の科挙合格はまず間違いないと、同年代の両班の子弟たちの間でも専らの噂である。
 容姿も凛々しく端麗で、下手をすれば女に間違えられかねない自分とは雲泥の差だ。皇秀龍と自分を比べられたら、どちらに軍配が上がるかは明白だ。

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