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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

「先ほど、兄上も仰せでしたが、時は人を変えるとは、真にそのとおりです。もう鞭で尻をぶたれて泣きべそをかいていたあのジスンはどこにもいませんよ。彼のような男もまた、朝鮮という国の未来にとって是非とも必要な人材です。ですが、兄上、ジスンも凄いとは思いますが、私は兄上の常に真摯に真理を追究するその姿勢に共感を憶えますし、尊敬もしています」
 弟から直截に告げられ、兄の白い面がうっすらと上気した。
「面と向かってあからさまに褒められると、恥ずかしいよ」
 落ち着いた兄には珍しく、しきりに照れている。
 準基は微笑んだ。
「心からそう思うゆえ、申し上げたのです」
「ありがとう」
 こんなに嬉しげに笑う兄の顔は見たことがない―、そう思えるほどの笑顔だった。
「ところで、準基。一つだけ訊いても良いか?」
「はい、何なりと。お応えできることならば、歓んでお応え致しますが」
 生真面目に畏まった弟を見て、兄はうっすらと笑んだ。
「そなたの想い人の名を差し支えなければ、教えてくれないか?」
「―」
 今度は準基の顔が染まる番だ。
「浄蓮と申します」
「浄蓮―、良い名前だね。そなたが惚れた娘だ、きっと名のごとく蓮の花のように美しいのだろう」
 初めて出逢った日がありありと瞼に甦る。
 彼の前に突然、現れた美貌の少女は、凜とした美しさと妖艶さを合わせ持つ蓮のように眩しく輝いて見えた。
 準基はあの一瞬一瞬を思い出しながら応えた。
「そういえば、浄蓮はこんなことを申しておりました」
―客に選ばれるのではなく、客を選べるような妓生になって見せます。
 浄蓮の言葉そのままを伝えると、兄は眼を瞠った。

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