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R18っぽいけど実際はU15

第1章 月

エレベーター昇降券を買うのに30分


それからエレベーターに乗るまでもう二時間が経過


重い撮影機材を運ぶ私と山田君は、既に疲れきっていた


さっきまで横ではしゃいでいた子供や、ロマンチックな会話をしていたカップルも今は無言だった


人の疲れている表情はあまり絵にならない


何枚か収めたものの、使えそうな写真は一枚もなかった


ようやく順番が近づいたとき、さらに意欲を削ぐような光景を目の当たりにした


エレベーターには人間がぎっしりと押し込まれ、展望台へと送られる


三時間近く待たされたあげく待っているメインディッシュが寿司詰めとは酷いアトラクションだ


私は山田君と苦笑いを浮かべながら、機材をなるべくコンパクトにまとめた


エレベーターの中で写真を取るのは恐らく不可能だろう


順番待ちでストレスを蓄積した乗客の怒りを、逆撫でするかもしれないから

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