どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第1章 カワイイ娘
僕は、今日クラスの人達に頼まれていた本の返却を両手いっぱい抱えて図書室に向かって居た。
「わッ!…つあ!」
何にもない廊下で派手にズケーッ!と転けた僕は、今日もツイてない。
両手いっぱいに持っていた本が、3m近くの所まで飛んで行っていて、溜め息が出る。
「見てアイツ、どんくさー。」
「ウケるんだけど。」
後ろから、僕についてはやし立てる声が聞こえて来るが、僕は羞恥に顔を紅くすることしかできない。
いいもんね…どうせどんくさいもん…
ムスゥっとして、本を拾おうとしたとき誰かが僕の手を踏んだ。
「痛いッ…」
慌てて手を引っ込めて、踏んだ張本人を見る。
見てビックリ、クラスのアイドルの笠井歩くんだったからだ。
歩くんも、踏んでしまった事にビックリしたのか顔を驚きが隠せないような顔になってる。
その後、10秒位したあたりに
「ごめん!!気付かなかったよ、痛くない?」
大袈裟に僕の踏んだ手を取ってさする。
「あ…あぅ、うん。僕は大丈夫だよ。」
人気者に話し掛けられる事なんてほとんどないから緊張してしまう。
その後も、歩くんは何か言ってたけど緊張して脳みそがフリーズしてしまってなんて言ってるか分からなかった。
「歩くーん!そんな奴ほっといてさっさと行こうよ!」
連れの人が居るのか、歩くんはその人に呼ばれて行ってしまった。
そして、その連れの「そんな奴」っていう言葉が僕の耳に残った。
…何にも出来ないグズだけど、頑張って生きてるんだ。
鼻の先までずれ落ちてきていた地味な眼鏡を、またかけ直す。
うぅ…何で少しだけ泣いてるんだょ…
ズルズルっと鼻水を吸って、また本をかき集める。