どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第4章 思い
…あれから数日、僕の生活は平凡に戻っていた。
歩くんともアイラくんとも、あれ以来話をしていない。
歩くんに呼び出されることも、アイラくんが頼み事をすることさえも、無くなった。
…これが、普通なんだ。
数日間だけ、歩くんにチヤホヤされて…遊ばれてただけだ。
…「好き」だって言ったのも…きっと…嘘だ…
歪む視界は、僕の心だ。
アンバランスで、フニャフニャで…、「愛してる」って…言わないで欲しかった…、あんな…あんな儚い笑顔で「愛してる」って言われて…僕は、その気になった。
やっぱり僕はツイてない。
「愛してる」「好き」…、思って無いくせに…。
何で…?
本気じゃないって、分かってるのに…歩くんの唇の感触、匂いを思い出すだけで身体が熱くなる。
「…やっぱり、歩くんは化け猫だ。」
今日も取り巻きに囲まれながら、楽しそうに話をしている歩くんを、熱い水が流れ出る瞳で見つめて、僕もいつかの誰かのように儚く微笑んで見せた。
…もう、歩くんの目には…僕は映って無い…?
僕はね…歩くんの事…ね、……みたい。
今更気付いても…君の瞳には、僕は映ってない。
両想いになることは、無いのだろう…。
恋がこんなに…苦しくて…壊れそうで、歪んでしまいそうになるのを…僕は、知らなかった。
「愛してます。」
僕の声は、彼に届くことなく、教室の床に落ちてった。