続・捨て犬
第11章 ゆっくりしても・・いいの?
部屋に入って
スーツを脱ぎたかったけど
そんなことも
できないまま
俺は
エミと
ベットに腰かけた
「どうだった?バイト」
「・・・」
「今日は、何したんだ?」
エミの肩を抱いて
手を握った
「あの・・」
「うん」
「あのね・・」
「うん」
エミの頭を抱きよせて
俺の胸に包み込むと
エミは一度大きく
息を吸った
「パンを・・」
「うん」
「袋に入れたよ」
「すごいな」
「・・・・・」
「どうした?」
「色んな・・」
「ん?」
「色んなパンがあるの」
「うん」
俺は
エミの頬を
両手で優しく包んで
俺の方に
顔を向けさせた
「包み方が
色々ちがってるの」
「それは大変だなぁ」
「・・・ん・・」
「それが
上手くできなかったんだな?」
「・・うん・・」
「じゃあ
お客さんのことは
気にしないで
その包むのを
間違えないことだけ
考えて
ゆっくりやればいい」
「ゆっくりしてもいいの?」
「間違えて
パンがグジャグジャに
なるよりいいだろ?」
「うん・・・でも・・」
「一所懸命やってれば
お客さんは
ちゃんと待ってくれるさ
忙しい時は
おばさんが
変わってくれる
落ち着いて
ゆっくり
間違えないように
気をつければいいんだ
最初は
誰でもできないんだから」
「カズマ・・」
「ん?」
「がんばりたい」
エミ…
「無理すんなよ?」
「うん」