続・捨て犬
第12章 違うと思う
お客さんに
話しかけられたら
知らんぷりしろとは
言ったけど
まぁそれは
変な男らのことで
なにも
全員をシカトしろなんて
言ったつもりはなかったんだ
でも
エミには
伝わってなくて…。
どうやら
全ての客と話すな
って言われたと
思ってるみたいだ
「カズマ・・・怒った?」
俺が
頭の中で
そんなことを考えてると
エミは
突然そんなことを言い出し
泣きそうな顔で
俺を見た
「え?いや
怒ったりしてねぇよ?」
ちょっと
エミが怯えてるような
雰囲気を感じた俺は
わざと
優しく笑って見せた
「でも・・ごめんなさい」
「なんで
謝るんだよ
間違ってたのは
俺だろ?」
「・・・・だって・・
違うなんて言ったら・・・」
「ん?」
エミは
口を閉ざして
首を横にり
手を硬く握り締めて
身体を小さくした
「違う」
たった一言の
そんな小さな反抗でさえ
エミは
異常なまでの制裁を
受けていたのかもしれない
だから
こんな風に
怯えてるんじゃ…
それなのに
俺に
勇気を出して
「違う」
って俺に言ってくれたことが
なんだか
すごく嬉しかった
「俺は
怒ったりしねぇよ?
こうやって
話し合えばいいんだよな
どうして
違うと思ったのか
どうして
俺がそんなことを
言ったのか…。
それで
また
正しい道を
進めばいいんだよ
な?エミ
こっち
おいで」