続・捨て犬
第15章 早く大人になって
「萩原さんは
カズマさんが羨ましいって
よく言ってます」
「え?・・萩原が?」
「えぇ」
「そんなこと言ったのは・・
ずっと前じゃねーの?」
きっと
エミの本当のこと
話したあの日よりも
ずっと
前のこと
「いえ、つい昨日も。
私も・・
今日お会いして
そう思いました
エミちゃんが
羨ましいなって」
「そ、そんな
普通ですよ?」
「そうかな・・・
もう結婚して何年もたった
家族って感じに
私には見えたんですけど」
俺とエミが・・・家族。
それから
久保木さんと別れ
俺はエミの手を握って
黙ったまま歩いた
久保木さんの言葉が
頭から
離れなかったからだ
家族のいない俺と
家族と
会いたがらないエミ
俺も
エミも
恋人を
求めてたんだと
思ってたけど
愛する誰かを
求めてたんだと
思ってたけど
家族が
欲しかったのかな・・
俺が
思わずエミの手を
ぎゅうっと握りしめると
エミは
俺を見上げて微笑み
俺の手を
ぎゅうっと握り返した
「エミ」
「ん?」
「早く大人になって」
「うん」
早く結婚してーから。