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続・捨て犬

第19章 最終章③・・・本性


「俺は親なんだ
娘をどうしようが
文句言われる筋合いは無いっ!!

くっそ
離せっ!」


殴られる


そう思ったのに
俺は殴られることはなく
男の苦しむ声が聞こえた

恐る恐る目を開けると

殴りかかろうとした
その腕を
馬鹿力の萩原に捕まれていた


捕まれたその腕は
相当痛いだろう


「残念だなぁ」

萩原の落ち着いた声が聞こえた

「な、なんだと?!
くっ、は、離せっ…っうっ」


「さっきの女
警察に行くらしいぜ?
お前がやったって証拠も
あるんだそうだ。
これで終わりだなぁ、お前」


「……っ…」


「そんなことがあったら
娘を見つけて連れ戻そうとしても
もう無理だろーなぁ。
警察に娘が虐待されてたから
戻らねーって言ったら
それで話は終わりだ」


「……」


その時
俺を掴む
男の手から力が抜けた


そして
おばさんの
切ない声が聞こえた


「もう…探さないで下さい。

あの子が…
あの子が震えるのを
もう二度と見たくないわ。

もし
あなたがあの子を
連れ戻しにきても
絶対に阻止しますから!」


「な、何をっ!
あっっ、っくっ」


「す、すべて
今のやり取りも
ろ、録画しましたから!」


「さ、カズマ行くか。
もうココに居る理由はねーし
コイツに話すことも
なんもねぇ」


「あぁ」


萩原が腕を解放しても
エミの親父は
ただ呆然と
突っ立ったままだった。


「行くぞ」


萩原は
震えるおばさんの背中に手を添え
そして俺の背中を強く押した。

なんだか
全身の力が抜けた俺は
萩原に促されるまま歩き始めると
背後から
静かに立派な玄関のドアが
閉まる音が聞こえた。


「なぁ萩原」


「ん?」


「あいつ…

エミのこと…」



「あぁ」



「元気にしてるのか?

とも
聞かなかったなぁ…」


「あぁ…」


「せめて…」


「ん?」


「せめて

どこかで
母親がエミのことを
心配してくれてるといいな

会えなくてもさ…」



なぜだろう


俺の目から
止めどなく
涙が溢れていた

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