続・捨て犬
第20章 最終章④・・・着信
『コンコン』
「あ…」
「お取り込み中わりぃなー」
萩原がドアを開けて
顔を覗かせると
唇を片方上げてニヤリと笑った。
「いや、なんも問題ねーけど…」
「けど?」
「しばらく離れねぇと思う」
エミの様子が
おかしい事に気づいた萩原は
少し顔を歪めてから頷き
おばさんと一緒に
静かに部屋に入った
萩原は
そのまま一番奥のソファに
腰掛け
おばさんは
優しく微笑みながら
「本当に無事で良かった…」
そう言って
エミの頭をゆっくりと撫でた。
おばさんは
エミの震えに気づいたのか
それから言葉を失い
俺の顔を見ながら
目を潤ませた。
「おばさん、座って下さい。
俺達も座ろうか、エミ。
疲れただろ?
なんかあったかいもんでも飲むか?」
もちろん返事はないが
俺はエミを抱きしめたまま
ソファに座り
エミにココアを飲ませてやりたいと
萩原に頼んだ。
「おばさん
エミは久しぶりに親父を見たり
声を聞いたりして
昔のことを思いだしてしまって
それで
こんなに震えてるんだと思います。
少ししたら
落ち着きますから
あんまり心配しないでください」
それから萩原が
ココアを持ってきてくれたが
よほどショックだったのか
エミはなかなか俺から離れることができず
熱かったココアは
どんどんと冷たくなっていった