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続・捨て犬

第21章 最終章⑤・・・完結


「おーー!」


そんな湿った空気を
追いやるように
大きな声を出したのは

潤んだ目を
誤魔化すように
何度もまばたきをしながら
唐揚げを持ってる
萩原だった


「カズマもやっと
決心したのか!!
それがいい!
あいつ(エミの親父)のことなんか
気にしないで結婚しちまえ!
あいつはもう
エミちゃんを探したりしねーだろーし
探したとしても
俺達が守ってやるから。

な!かぁちゃん」


「そうよ!
任せなさい!」


おばさんは
涙を拭いながら
俺達に笑いかけた


「いやーしかし
あいつを目の前にして
かぁちゃんが
動画撮ってたとはなー
ビビって腰でも抜かしてると
思ってたんだけどな
(笑)」


「動画?」


「あぁ。
証拠に動画撮ったからって
スゲー勢いで
言ってたじゃないか」


「あーあれ?」


「そー、それだ、それ
ん、あ、うめー!
唐揚げ最高ーー」


「あれね
撮ってないわよ?」


「え?」

「え?」

「え?」


皆んなの目が
一斉に丸くなった


「何かあったら
動画を撮っておいてねって
凛ちゃんに言われてたんだけど
おばさん
動画の撮り方なんて
分からなくてねー

あはははは」


「あははって、マジかよ!
ということは
かぁちゃんの簡単な嘘に
あいつ騙されたってわけか?!
すげーな、かぁちゃん。
あははは」


「あははは」

「あははははは」


おばさんの
衝撃的な告白で
カフェは笑いに包まれた


「あー腹痛ぇー
マジかぁちゃん
勘弁してくれよー」


あの場にいた
俺と萩原は
もちろん腹を抱えて笑い

凛さんは
驚いた顔をしたあと
ケラケラと笑い始めた

由香ちゃんとおじさんは
手を叩きながら
大笑い

もちろん
おばさんもだ



けど
俺はふと
我に返った


エミ
大丈夫かな…


みんなが笑ってる
話のネタが
あの悪魔のような
エミの親父だったからだ


俺は
エミがまた
怯えてるんじゃないかと
慌ててエミの顔を覗き込んだ


…えっ…


エミが…


笑ってる?



そこには

俺の心配をよそに

楽しそうに
歯を見せて笑うエミがいた

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